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オォン、キキッ。
もう何回目になるだろう、耳馴染みのあるあの音が聞こえて来た。
少し置いてからのカンカンカンカンという階段を急ぎ足で降りてくる音も時間
を待たずに直ぐ聞こえてくるだろう、そう思っていた。
薄ぼんやりとする記憶の中で自分が此処に連れてこられた時を思い出した。
いつもと同じ道、いつもと同じ景色、いつもと変わらない夕方
静寂を掻き乱す声すらも奪い取られ知らない間に此処に連れてこられた。
突然やってきた喧噪でいつもと変わらない「平和」に気づくなんて今ではもう
遅過ぎる事実なのだ。
私は只管此処で「飼育」されている。やっとそれが理解できるようになった。
私の自由は何処にもない。手綱を握っているのは他人であるあの人。
ガラガラガラ パチッカチッ パパパパパッ。
目だ慣れないが明りの点いた音の様だ
何やらとても機嫌の好さそうな鼻歌交じりで大きなケージを閉めておく鎖の錠
前が大きな音を立ててゴトンと外れた。
・・・・・・正直もう此処から逃げ出そうとは、思わない・・・・・・
何故なのかは自分でもわからない。度重なる拷問の苦痛、恐怖、絶望。
毎日毎日繰り返される事によって変わったのは、自分なのか相手なのかすら最
早解らない。一つだけ解った事は全てが「無駄」であるという事。
此処から逃げる事も、痛みから逃げる事も、そして考える事も何もかも
「無駄」そう心底知らしめられた。
裸にされ、首輪に繋がれ、這いずり回る檻の中。
子供の様な目線で玩具とじゃれ合う様に私に痛みを与える。
でも解らないのが時には真珠のように丁寧に遊ぶ時もある。
先日は、太ももに鋭い痛みが走り声も出せずにメスで脚の皮を剥がされた。
その前は背中だった。切られるにより剥離される時の方が真っ白になった。
疑問などとっくに捨てた
私はただの玩具なのだと
切られ、剥がされ、縫われ
生きたままの人形と成り果てた
そんな私を「可愛い」という
私には理解しがたい 出来ない
アイツは私を好きなように蹂躙する事をどう思っているのか
そして今日私に新しい首輪を付けた。
今までの様な重厚な厚さも鎖も無い
不思議ととても付け心地が良いと感じてしまった。
アイツは満面の笑みでこう言い放った
「お前がお前に戻ったな」
意味が理解できなかったが、目隠しを外され鏡の前に連れていかれて愕然とし
たが、私は一瞬で理解した。
「これは私.......」
そう、色も質感も同じだった。それもそのはず、この皮は私の皮だ・・・。
毎日剥いで行った皮を使って私を私にしたのだった。
両手に付けた手枷も、眼球を抉られた時の眼帯も、グラインダーで切られた時
に留めたベルトも全て私だった。
恐怖感など無くただ純粋に「美しい・・・・愛」そう思った。
サイレントガレージ
サイズは20センチから45センチ上まで
べっとりと血塗れの加工がしてある本革作品です。勿論血は一点一点違います。
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